営業権の売買契約書を作成するための記入式モデル
この営業権売買契約書のモデルは、店舗や事業所の営業権を譲渡・譲受する際に、対象資産、売買代金、支払方法、引渡し日、従業員や契約の取扱い、債務の負担および競業避止義務を明確にするための書式です。実際の取引では、賃貸借契約、許認可、税務および会社法上の手続も確認し、個別事情に合わせて内容を調整してください。
営業権の売買は、店舗、顧客基盤、設備、屋号、ノウハウなど、事業を構成する要素を引き継ぐ取引です。対象となる権利や資産の範囲を曖昧にすると、引渡し後に費用や責任の負担をめぐる争いにつながります。営業権売買契約書では、譲渡対象、代金、引渡し条件および引継ぎ事項を具体的に定めることが重要です。本モデルは、日本における事業譲渡を想定した一般的な記入用のひな形です。
営業権売買契約書とは
営業権売買契約書は、事業を営む者が、営業上の権利・資産その他の事業要素を相手方へ譲渡する際の合意を記録する契約書です。実務上は「事業譲渡契約書」として作成されることも多く、単なる設備売買とは異なり、営業に関係する契約、顧客情報、在庫、商号や営業上の信用の取扱いまで検討します。
営業権という言葉が指す内容は取引ごとに異なるため、契約書内で定義することが不可欠です。譲渡対象に含むものと含まないものを、別紙の資産目録や契約一覧で特定しましょう。
契約書に記載すべき主要事項
当事者の氏名・住所・代表者資格を正確に記載し、法人の場合は登記上の商号、本店所在地および代表者を確認します。個人事業主の場合も、屋号だけではなく本人の氏名と住所を明示します。
| 記載項目 | 目的 | よくある誤り |
|---|---|---|
| 譲渡対象 | 設備、在庫、屋号、契約等の範囲を特定する | 「一式」とだけ記載し、内容を特定しない |
| 売買代金 | 総額、税の扱い、内訳を明確にする | 消費税や在庫評価額の扱いが不明確 |
| 支払条件 | 支払日、方法、分割条件を定める | 振込先や遅延時の取扱いを定めない |
| 引渡し | 引渡日と引渡方法を確定する | 鍵、帳簿、データの引渡しを漏らす |
| 債務の取扱い | 既存債務を誰が負担するかを整理する | 第三者に対する責任との違いを見落とす |
譲渡対象を別紙で特定する方法
什器備品、在庫、車両、ソフトウェア、ドメイン名および契約上の地位などは、別紙に品目、数量、状態、評価額を記載します。顧客情報や営業秘密を引き継ぐ場合には、個人情報保護法や秘密保持の観点から、対象データと移転手続を慎重に定める必要があります。
売買代金と支払条件の定め方
売買代金は、営業権、固定資産、在庫、保証金返還請求権などの内訳を示すと、会計・税務上の処理や紛争予防に役立ちます。消費税の課税対象となる資産と非課税または不課税となり得る項目は区別して確認してください。
分割払いを採用する場合は、各支払期日、遅延損害金、期限の利益喪失、所有権または利用権の扱いを取り決めます。代金の一部を引渡し後に支払う場合には、未払部分を担保する方法も検討対象です。
賃貸物件で営業している場合
店舗が賃貸物件であるときは、営業権の譲渡だけで賃借権や賃貸借契約上の地位が当然に移転するわけではありません。賃貸人の承諾の要否、保証金・敷金の精算、原状回復義務および新たな賃貸借契約の条件を、事前に確認しましょう。
編集できるテンプレート
文書テンプレート
営業権売買契約書
売主____________________(以下「甲」という。)と、買主____________________(以下「乙」という。)は、甲の営業権等の譲渡に関し、以下のとおり営業権売買契約(以下「本契約」という。)を締結する。
契約締結日:________年____月____日
契約締結場所:____________________________
甲(売主)
住所:____________________________
氏名/商号:____________________________
代表者(法人の場合):____________________________
乙(買主)
住所:____________________________
氏名/商号:____________________________
代表者(法人の場合):____________________________
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象事業・店舗名 | ____________________________ |
| 営業場所 | ____________________________ |
| 譲渡対象 | 営業権、別紙資産目録記載の資産その他____________________________ |
| 売買代金 | 金____________________円(消費税の取扱い:____________________) |
| 支払方法・支払期日 | ____________________________ |
| 引渡日 | ________年____月____日 |
| 競業避止の期間・地域 | 期間____________________ 地域____________________ |
- 譲渡対象
甲は乙に対し、前表および別紙資産目録に記載する営業権、設備、備品、在庫その他の資産を譲渡し、乙はこれを譲り受ける。 - 売買代金
乙は甲に対し、売買代金として金____________________円を、________年____月____日までに、甲指定の口座へ振り込む方法により支払う。振込手数料は____________________の負担とする。 - 引渡し
甲は、引渡日に、譲渡対象物、鍵、関係書類、帳簿その他合意した資料を乙に引き渡す。引渡しの詳細は、別途作成する引渡確認書による。 - 債権債務の取扱い
本契約締結日以前に甲に発生した債務は、原則として甲が負担する。ただし、乙が承継する債務は次のとおりとする:____________________________。 - 契約上の地位等
賃貸借契約、取引先契約、リース契約その他の契約上の地位の承継については、必要な相手方の承諾を得るものとし、その詳細は次のとおりとする:____________________________。 - 表明および保証
甲は、譲渡対象について、第三者の権利または処分制限がある場合には、その内容を乙へ事前に開示する。 - 競業避止
甲は、引渡日から____________________年間、____________________の地域において、乙の事業と競合する事業を行わない。ただし、別途書面による合意がある場合を除く。 - 秘密保持
甲および乙は、本契約に関連して知り得た相手方の営業上、技術上その他の秘密情報を、正当な理由なく第三者に開示または漏えいしてはならない。 - 協議および管轄
本契約に定めのない事項または本契約の解釈に疑義が生じた場合、甲乙は誠実に協議して解決する。協議で解決しない紛争については、____________________地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約成立の証として、本書2通を作成し、甲乙が署名または記名押印の上、各1通を保有する。
甲(売主)住所:____________________________
氏名/商号:____________________________ 印
乙(買主)住所:____________________________
氏名/商号:____________________________ 印
この場で文面を編集できます。変更はブラウザーに保存され、印刷や Word・PDF への書き出しができます。
引渡しと承継手続
引渡し条項には、営業開始の基準日、店舗の鍵、設備、帳簿、電子データ、在庫および関係書類を引き渡す時期と方法を記載します。許認可を必要とする業種では、譲受人が自ら許可を取得しなければ営業を開始できない場合があるため、許認可取得を前提条件にすることもあります。
- 譲渡対象となる資産・契約・データを一覧化します。
- 賃貸人、取引先、行政機関などに必要な承諾・届出を確認します。
- 売買代金、税金、保証金および未収未払金の精算方法を合意します。
- 引渡日に資産目録と確認書を用いて受領状況を確認します。
引渡し時には、鍵、設備、在庫、アカウント情報および書類を一覧表で照合し、双方が署名した引渡確認書を残すことをおすすめします。
債務、従業員および競業避止の注意点
事業に関する借入金、買掛金、未払賃料、税金その他の債務を誰が負担するのかは、契約上明記しなければなりません。当事者間の負担合意と、債権者に対する法的責任は必ずしも一致しないため、必要に応じて債権者の承諾を取得します。
従業員の雇用契約は、事業譲渡によって当然に移転するとは限りません。譲受人への転籍・再雇用には個別の同意が必要となる場合があり、労働条件、退職金、社会保険の手続を含めて検討します。
- 既存の借入金、買掛金、未払費用の負担者
- 従業員の雇用継続、労働条件および個別同意
- 取引先との基本契約やリース契約の承継可否
- 個人情報、営業秘密およびデジタル資産の管理
- 譲渡人の競業避止義務の地域、期間および対象業種
よくある質問
営業権だけを売買することはできますか。
可能ですが、営業権に何を含めるのかを明確にする必要があります。設備、在庫、屋号、顧客関係、ノウハウ、賃借権などは、それぞれ別途の譲渡・承諾手続が必要になることがあります。
事業の借金は自動的に買主へ移りますか。
当事者間で負担者を定めても、債権者との関係で当然に債務者が交替するとは限りません。免責的債務引受などを行う場合には、原則として債権者の承諾を確認してください。
競業避止条項は必ず必要ですか。
必須ではありませんが、譲受人が営業上の信用や顧客基盤を引き継ぐ場合には重要です。対象地域、期間、業種を過度に広く設定せず、取引の実情に応じた合理的な範囲に定めます。