株式ベスティング契約書を作成するための実用テンプレート
株式ベスティング契約書は、役員、従業員、共同創業者などに対して株式または株式取得に関する権利を段階的に確定させる条件を定める文書です。本テンプレートでは、対象となる株式等、権利確定期間、クリフ、業績条件、退職・解任時の取扱い、秘密保持および譲渡制限を整理して記載できます。
株式ベスティング契約書は、役員、従業員または共同創業者に対し、一定期間の勤務や業績達成を条件として株式等の権利を段階的に確定させるための契約書です。スタートアップや成長企業では、長期的な貢献を促し、早期離脱時の権利関係を明確にする目的で利用されます。対象が実株式、ストックオプションその他の権利であるかにより、必要な会社手続や税務上の検討が変わります。署名前に、定款、株主間契約および既存の報酬制度との整合性を確認することが重要です。
株式ベスティング契約書とは
ベスティングとは、あらかじめ付与対象とされた株式または株式取得権が、時間の経過、継続勤務、業績達成などの条件に応じて、受益者に帰属する仕組みをいいます。契約では、誰に、何を、どの条件で、いつ確定させるかを具体的に定めます。
日本では、会社法上の株式発行や新株予約権の発行に関する手続、株式譲渡制限、株主総会または取締役会の決議の要否などを個別に確認する必要があります。単なる合意書だけで完結しない場合があるため、会社の機関設計と発行条件を踏まえて作成してください。
ベスティングの主な目的
主な目的は、人材の定着、共同創業者間の貢献の公平化、企業価値の向上に向けた利害の一致です。離職・退任時に未確定分を失権させる条件を置くことで、長期的な関与を促すことができます。
契約書に記載する重要項目
対象となる株式の種類・数、付与日、権利確定開始日、確定期間、クリフ、確定の計算方法を明確にします。さらに、退職、解任、死亡、障害、会社売却などの事由が生じた場合の取扱いを定めることが実務上重要です。
| 記載項目 | 役割 | よくある不備 |
|---|---|---|
| 対象株式等 | 株式の種類、数、取得条件を特定する | 普通株式か新株予約権かが不明確 |
| ベスティング期間 | 権利が確定する総期間を示す | 開始日・終了日の定めがない |
| クリフ | 最低継続期間前の権利不確定を定める | クリフ経過後の確定割合が曖昧 |
| 退職時の取扱い | 未確定分の失権や買戻しを規定する | 自己都合・会社都合を区別していない |
| 会社売却時 | 加速確定の有無と範囲を定める | 支配権変更の定義がない |
権利確定スケジュールの設計
一般的には、一定期間経過後に最初のまとまった割合を確定させるクリフを設け、その後は毎月、毎四半期または毎年の割合で段階的に確定させます。契約書には、端数処理、勤務開始日との関係、休職期間の算入可否も記載すると紛争予防に役立ちます。
クリフ条項の考え方
クリフは、短期間で離脱した者に権利が残ることを防ぐ仕組みです。例えば、1年間のクリフ後に一定割合を確定させ、その後に均等配分で確定させる設計が考えられますが、事業内容や職務内容に応じた合理的な設定が必要です。
- 付与対象者の氏名、役職および契約上の地位を特定する。
- 株式、新株予約権その他の対象権利を明示する。
- 権利確定の開始日、期間および計算単位を定める。
- クリフ期間と、クリフ到来時に確定する割合を示す。
- 退職・解任・死亡・支配権変更時の効果を区分する。
編集できるテンプレート
文書テンプレート
株式ベスティング契約書
本株式ベスティング契約書(以下「本契約」という。)は、____________________において、________年____月____日、以下の当事者間で締結された。
甲(会社)
商号:____________________
本店所在地:____________________
代表者:____________________
乙(付与対象者)
氏名:____________________
住所:____________________
役職又は職務:____________________
甲および乙は、乙に対する株式等の権利確定に関し、以下のとおり合意する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる権利 | 普通株式/新株予約権/その他(____________________) |
| 対象数 | ____________________株(個) |
| 付与日 | ________年____月____日 |
| ベスティング開始日 | ________年____月____日 |
| ベスティング期間 | ____________________年間 |
| クリフ期間 | ____________________か月間 |
| クリフ到来時の確定割合 | ____________________% |
| その後の確定方法 | 毎月/毎四半期/毎年 ____________________%を確定 |
| 取得価額又は行使価額 | 1株(個)当たり 金____________________円 |
- 付与および対象権利
甲は、乙が本契約の条件を満たすことを条件として、上記表記載の対象となる権利を乙に付与し、又は取得させるものとする。 - 権利確定
乙がベスティング開始日から継続して甲又は甲が指定する関係会社に勤務又は従事した場合、対象権利は上記表記載の条件に従い段階的に確定する。端数が生じる場合の取扱いは、甲が合理的に定めるものとする。 - クリフ
乙がクリフ期間満了前に退職、退任その他これらに準ずる事由により甲との関係を終了した場合、当該時点で未確定の対象権利は、別段の書面による合意がない限り、確定しないものとする。 - 退職・解任時の取扱い
乙が自己都合により退職又は退任した場合、未確定の対象権利は失権する。解雇、懲戒解任、死亡、疾病その他の事由が生じた場合の確定済みおよび未確定の対象権利の取扱いは、次のとおりとする。____________________ - 譲渡制限
乙は、甲の事前の書面による承諾なく、対象権利又はこれに基づき取得した株式を譲渡、担保設定その他の処分をしてはならない。ただし、法令、定款又は別途の株主間契約に従う場合を除く。 - 支配権変更
甲に合併、株式交換、株式移転、事業譲渡その他の支配権変更が生じた場合の未確定権利の取扱いは、次のとおりとする。____________________ - 秘密保持
乙は、本契約および対象権利に関して知り得た甲の営業上、技術上その他一切の非公知情報を、法令上又は甲の書面による承諾がある場合を除き、第三者に開示又は漏えいしてはならない。 - 必要な承認等
本契約に基づく株式又は新株予約権の発行その他の行為について、法令、定款又は社内規程に基づく決議、承認又は手続が必要な場合、甲はこれを行うものとする。 - 協議および管轄
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた場合、甲乙は誠実に協議して解決する。本契約に関する紛争については、____________________地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印又は署名のうえ、各1通を保有する。
________年____月____日
甲(会社)
所在地:____________________
商号:____________________
代表者:____________________ 印
乙(付与対象者)
住所:____________________
氏名:____________________ 印
この場で文面を編集できます。変更はブラウザーに保存され、印刷や Word・PDF への書き出しができます。
退職・解任および会社売却時の扱い
自己都合退職、懲戒解雇、会社都合退職、死亡または疾病による退任では、未確定分・確定済み分の扱いが異なることがあります。特に確定済み株式の譲渡、会社または既存株主による買戻し、評価方法、支払時期は具体的に決めるべき事項です。
合併、株式交換、事業譲渡その他の支配権変更が起きる場合、未確定分を一括して確定させる加速ベスティングを設けることがあります。ただし、買収契約との整合や、買主側の制度への引継ぎを考慮して条件を設計してください。
ベスティング条件は、付与対象者ごとの口頭説明に頼らず、計算例を含む書面で共有し、会社決議や関連契約と矛盾しないよう管理しましょう。
作成から締結までの手順
契約書を作成する前に、会社が付与できる権利の内容、発行可能株式数、定款の譲渡制限、既存株主との合意を確認します。そのうえで、対象者との合意内容を文書化し、必要に応じて社内決議および登記・税務対応を行います。
- 付与目的、対象者、対象株式等および付与枠を決定する。
- ベスティング期間、クリフ、退職時の条件を設計する。
- 定款、株主間契約、社内規程および会社法上の手続を確認する。
- 契約書に署名し、決議書その他の関連書類とともに保管する。
税務・会社法上の確認事項
株式や新株予約権の付与は、受益者および会社に税務上の影響を及ぼすことがあります。権利行使時、株式取得時、株式売却時の課税関係は、付与の形態や条件により異なるため、事前の専門家確認が望まれます。
また、募集株式または新株予約権の発行には、会社法上の決議や通知が必要となる場合があります。非公開会社では譲渡承認の手続も問題となるため、契約の効力発生条件として必要な承認の取得を置くことが有用です。
よくある質問
ベスティングの対象は必ず株式ですか?
必ずしも株式に限られません。新株予約権、将来の株式取得権、報酬請求権などを用いることもありますが、それぞれ法的・税務的な取扱いが異なります。
クリフ期間中に退職した場合はどうなりますか?
一般には、クリフ到来前に退職した場合、未確定の対象権利は確定せず失権します。ただし、死亡、疾病、会社都合退職などについて例外を設けることがあります。
会社が売却された場合、未確定分はどうなりますか?
契約の定めによります。未確定分を即時に全部または一部確定させる方法、買主の制度へ承継する方法、または失権・精算する方法があり、支配権変更の定義と併せて明確に規定します。